地方競馬のIT化

stand.jpgソフトバンク、楽天が地方競馬に参入し、ネット投票やレース動画配信が普及したおかげで、自宅に居ながらにして全国の地方競馬を楽しむことが当たり前となった。地方競馬全国協会のホームページには全場の出走表が掲載されているので、新聞を手に入れる術が無くとも予想が可能だ。
ただ、地方競馬はクラス分け体系もJRAと異なるどころか、競馬場ごとに違ったりもするので、いきなり見てもわけわからん、ということがある。私の場合はいまだに大井の下級条件がわけわからん状態である。その地区の騎手、調教師の力関係も一から勉強せねばならない。努力して勉強し、予想したわりには配当はびっくりするほど安い(ことが多い)。JRA開催と被るのを防ぐためや、地元住民との協定で休日を避け、平日の真昼間に開催する競馬場では普通のサラリーマンにはまず縁がない。仕事中にインターネットで馬券を買うことを許す会社も無いだろう。土日に開催していたとしても、JRAの馬券を買える環境にあればそちらへ流れてしまう。「近くにある」以外の理由でそんな難解な地方競馬に好き好んで興味を示すのはどんな場合なのだろうか・・・。

私の場合は、一口馬主で所有していた馬がJRAを引退し、足利へ移籍したことがはじまりだった。その馬が出走するたびに足を運び、色々な理由が雪だるま式に付加していき、北関東競馬にハマりこむことになったのだ。北関東競馬は開催日に土日を含んでいた。宇都宮競馬場は自宅から片道3時間かかるものの、東武線利用で乗り換えも少なく、交通費が驚くほど安かった。それが、毎開催必ず通うことができた大きな理由だ。北関東競馬が無くなった今、足を運ぶことができなくとも、インターネットでばんえい競馬、ホッカイドウ競馬、金沢競馬を中心にたまに遊んでいる。ばんえい競馬はともかく、ホッカイドウ競馬と金沢競馬に関しては、宇都宮で応援していた騎手や馬が移籍して行ったからである。通える距離にあるのなら通いたいところだ。

私の周囲の地方競馬好きな人の中には、特定の馬や騎手がきっかけでハマったという人は多い。特に女性はそういう人が多い。だったら、そんな魅力のある馬や騎手を広く紹介すれば良い・・・というのが「U駿」のコンセプトのひとつであった。幸い、年に数回しか出走しないJRAの競走馬と違い、地方競馬は毎開催大好きな馬が出走してくれる。自然に競馬場へ足を運ぶ回数が増える。そんな魅力的な馬を紹介する活動は、個々がインターネット上でサイトを持ってやったりもしていた。しかし、インターネットというのは興味を持って検索されなければ見てももらえない受身であり、新規の開拓にはならない。そこで、宇都宮競馬に特に関係の深いO氏のサイト上で集まった有志が半年間の試行錯誤の末、これを組織的に行なって、紙媒体で積極的に発行するということとなったのだ。

月刊3000部~5000部を発行し、開催日に競馬場入り口で全員に手渡し配布し、競馬場へ来場する全員に目を通してもらうことをめざした。競馬事務所を通し、宇都宮競馬の馬券を発売している大井競馬場の「ふるさと場外」へも毎月500部を送っていただいた。年に一度の全国交流「とちぎマロニエカップ」特別号は全国の競馬場へ発送し、置いていただいた。ただし・・・同じ北関東HOT競馬に名を連ねる高崎けいばには非常に不可解な理由で置かせていただくことはできなかった。

競馬場内で配っているだけでは社内報と同じである。宇都宮市内、近郊でお店を開いている元・騎手の方が経営する飲食店、テレビ局のロビー、美容院の待合室、コンビニエンスストアと、競馬に興味の無い方がヒマつぶしにちょっと手にとってくださる読み物となることを期待し、置かせていただいた。メディアにも積極的に投稿し、とりあげていただけるよう努力をした。(←これについては後日詳しく。)

この情報誌を作成するにあたって、インターネットというのは非常に有効であった。メンバーが栃木、茨城、千葉、神奈川と関東一円に分散していたため、開催日以外に顔を合わせることは難しい。パスワード制の掲示板を設置し、打ち合わせ、原稿のやりとりをほぼその場ですませ、顔を合わせるのは月一度、開催日に集まって確認をする程度であった。掲示板は、メンバー全員に随時状況を確認してもらうことができるため、メールよりも遥かに有効だ。

インターネットの普及により、紙媒体がないがしろになってるな~と思う部分がある。騎手や関係者のブログは応援する者にとっては非常に面白い。しかし、知る人ぞ知る・・・に留まってしまう。地方競馬全国協会や、各競馬場のサイトが充実する一方、地方競馬の広報誌であった「ハロン」は月刊から季刊に格下げになった上、季刊ゆえに情報も古い。交流重賞のレポートが中心なので、カラーページはJRAの馬、武豊と内田博幸が交互に出てくる始末である。
インターネットと日常生活がかなり密接になっている人達とっては冒頭のような地方競馬のIT化というのは非常にありがたい話だし、無くてはならないものだ。しかし、意外に、私達の思ってる以上に、インターネットは普及していない。インターネットサイトを充実させて、広報がんばってます!というのではかなり足りない。インターネット上での宣伝は固定数の地方競馬ファンの取り合いでしかない。冒頭に書いたとおり、新しい競馬場に入り込むにはある程度の努力が要るため、自分のホームとなる競馬場があるファンにとっては、他場にハマりこむことも難しい。下手をすればインターネット上のサイト充実の安心感で広報活動が後ろ向きになっていることもあり得る。ソフトバンクや楽天に頼りきりで安心なのかどうか、よーく振り返ってみて欲しい。