地方競馬あれこれ


~地方競馬をあれこれ考えるお話。

 

栃木県とネーミングライツ

腐れ縁というか、後チェックというか、いまだに定期的に下野新聞だの、栃木県関係のニュースをチェックしている。しだいに競馬場関連のニュースは流れることがなくなってきた。跡地の話もちょっと見えていない現状。

そんな中、こんなニュースが。

http://www.kenmin-fukui.co.jp/00/tcg/20061122/lcl_____tcg_____002.shtml

ようは、公的な施設のネーミングライツを売って、お金にしようという話。
総合文化センター、宇都宮産業展示館、子ども総合科学館、なかがわ水遊園が対象。
一件当たり数千万だという。金額的に売れるかどうか微妙だけど、こんなことができるのであれば、宇都宮競馬場もネーミングライツの売買、出来たんじゃない?数千万で売れれば、赤字幅も少しは減ったはず。できることをやらずに、赤字赤字といっては廃止にしていく。公営ギャンブルに対する目って厳しい、本当にそう思う。

しかし、なかがわ水遊園なんてはじめて聞いた。赤字どれくらいだろう?
いいなあ、赤字でも続けられて。
(実際の収支は知らない。黒字だったらごめんなさい。)

さて。ネーミングライツ。仮に宇都宮競馬場が売りに出たらどこが買ってくれれうだろう?やっぱ餃子会か?すると名前は・・・

宇都宮餃子競馬場。

なんだかすっげー美味しそうな競馬場!
人、絶対きたよこれ。

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地方競馬のIT化

stand.jpgソフトバンク、楽天が地方競馬に参入し、ネット投票やレース動画配信が普及したおかげで、自宅に居ながらにして全国の地方競馬を楽しむことが当たり前となった。地方競馬全国協会のホームページには全場の出走表が掲載されているので、新聞を手に入れる術が無くとも予想が可能だ。
ただ、地方競馬はクラス分け体系もJRAと異なるどころか、競馬場ごとに違ったりもするので、いきなり見てもわけわからん、ということがある。私の場合はいまだに大井の下級条件がわけわからん状態である。その地区の騎手、調教師の力関係も一から勉強せねばならない。努力して勉強し、予想したわりには配当はびっくりするほど安い(ことが多い)。JRA開催と被るのを防ぐためや、地元住民との協定で休日を避け、平日の真昼間に開催する競馬場では普通のサラリーマンにはまず縁がない。仕事中にインターネットで馬券を買うことを許す会社も無いだろう。土日に開催していたとしても、JRAの馬券を買える環境にあればそちらへ流れてしまう。「近くにある」以外の理由でそんな難解な地方競馬に好き好んで興味を示すのはどんな場合なのだろうか・・・。

私の場合は、一口馬主で所有していた馬がJRAを引退し、足利へ移籍したことがはじまりだった。その馬が出走するたびに足を運び、色々な理由が雪だるま式に付加していき、北関東競馬にハマりこむことになったのだ。北関東競馬は開催日に土日を含んでいた。宇都宮競馬場は自宅から片道3時間かかるものの、東武線利用で乗り換えも少なく、交通費が驚くほど安かった。それが、毎開催必ず通うことができた大きな理由だ。北関東競馬が無くなった今、足を運ぶことができなくとも、インターネットでばんえい競馬、ホッカイドウ競馬、金沢競馬を中心にたまに遊んでいる。ばんえい競馬はともかく、ホッカイドウ競馬と金沢競馬に関しては、宇都宮で応援していた騎手や馬が移籍して行ったからである。通える距離にあるのなら通いたいところだ。

私の周囲の地方競馬好きな人の中には、特定の馬や騎手がきっかけでハマったという人は多い。特に女性はそういう人が多い。だったら、そんな魅力のある馬や騎手を広く紹介すれば良い・・・というのが「U駿」のコンセプトのひとつであった。幸い、年に数回しか出走しないJRAの競走馬と違い、地方競馬は毎開催大好きな馬が出走してくれる。自然に競馬場へ足を運ぶ回数が増える。そんな魅力的な馬を紹介する活動は、個々がインターネット上でサイトを持ってやったりもしていた。しかし、インターネットというのは興味を持って検索されなければ見てももらえない受身であり、新規の開拓にはならない。そこで、宇都宮競馬に特に関係の深いO氏のサイト上で集まった有志が半年間の試行錯誤の末、これを組織的に行なって、紙媒体で積極的に発行するということとなったのだ。

月刊3000部~5000部を発行し、開催日に競馬場入り口で全員に手渡し配布し、競馬場へ来場する全員に目を通してもらうことをめざした。競馬事務所を通し、宇都宮競馬の馬券を発売している大井競馬場の「ふるさと場外」へも毎月500部を送っていただいた。年に一度の全国交流「とちぎマロニエカップ」特別号は全国の競馬場へ発送し、置いていただいた。ただし・・・同じ北関東HOT競馬に名を連ねる高崎けいばには非常に不可解な理由で置かせていただくことはできなかった。

競馬場内で配っているだけでは社内報と同じである。宇都宮市内、近郊でお店を開いている元・騎手の方が経営する飲食店、テレビ局のロビー、美容院の待合室、コンビニエンスストアと、競馬に興味の無い方がヒマつぶしにちょっと手にとってくださる読み物となることを期待し、置かせていただいた。メディアにも積極的に投稿し、とりあげていただけるよう努力をした。(←これについては後日詳しく。)

この情報誌を作成するにあたって、インターネットというのは非常に有効であった。メンバーが栃木、茨城、千葉、神奈川と関東一円に分散していたため、開催日以外に顔を合わせることは難しい。パスワード制の掲示板を設置し、打ち合わせ、原稿のやりとりをほぼその場ですませ、顔を合わせるのは月一度、開催日に集まって確認をする程度であった。掲示板は、メンバー全員に随時状況を確認してもらうことができるため、メールよりも遥かに有効だ。

インターネットの普及により、紙媒体がないがしろになってるな~と思う部分がある。騎手や関係者のブログは応援する者にとっては非常に面白い。しかし、知る人ぞ知る・・・に留まってしまう。地方競馬全国協会や、各競馬場のサイトが充実する一方、地方競馬の広報誌であった「ハロン」は月刊から季刊に格下げになった上、季刊ゆえに情報も古い。交流重賞のレポートが中心なので、カラーページはJRAの馬、武豊と内田博幸が交互に出てくる始末である。
インターネットと日常生活がかなり密接になっている人達とっては冒頭のような地方競馬のIT化というのは非常にありがたい話だし、無くてはならないものだ。しかし、意外に、私達の思ってる以上に、インターネットは普及していない。インターネットサイトを充実させて、広報がんばってます!というのではかなり足りない。インターネット上での宣伝は固定数の地方競馬ファンの取り合いでしかない。冒頭に書いたとおり、新しい競馬場に入り込むにはある程度の努力が要るため、自分のホームとなる競馬場があるファンにとっては、他場にハマりこむことも難しい。下手をすればインターネット上のサイト充実の安心感で広報活動が後ろ向きになっていることもあり得る。ソフトバンクや楽天に頼りきりで安心なのかどうか、よーく振り返ってみて欲しい。

 

U駿でめざしたかったこと

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私達が目指した「変化」とは、直接売上の向上を指すわけではない。同じ情報誌を制作していたメンバーでもそれぞれの思いはあっただろう。その中で私と私の旦那が目指していたのは、厩舎関係者内部になんとかしようという動きを起こしてもらうことであった。騎手や調教師、厩務員に限らず、獣医師、装蹄師、馬主、主催者、それぞれに何とかしなくてはという思いはあったはずだ。しかし、皆の思いがバラバラで、何をしたら良いのかがまとまらない。宇都宮競馬の楽しさを情報誌にまとめて発行する活動を通し、宇都宮競馬に関わる人の気持ちをひとつにしたい、というのがひとつの目的であった。

どんな競馬場が楽しいかを一番知っているのはファンであり、厩舎関係者と主催者との中立的立場で居られるのもファンである。競馬事務所も努力をしていなかったわけではない。競馬の好きな職員を募り、内部から良い案を出そうと頑張っていた。ただ、競馬事務所内で良い案が出たとしても、県営という立場上、なんでも即実行というわけにはいかない理由があったのだと思う。しかし、これがファンが勝手に起こした活動ならば別だ。「ファンがやっていることなので」という理由なら、大目に見てもらえるメリットがあり、競馬事務所からはバックアップという形で多大な協力を得ることができる。また、ファンと競馬事務所が親密になることで、ファンの希望を生の声で伝え、吸い上げてもらうこともできる。

情報誌「U駿」の活動は最初は確かに「なにこれ?」的に見られていた。しかし、毎回競馬事務所を通して厩舎関係者にインタビューを取り、ホースマンの生の姿を記事にし、コンスタントに月刊で発行し、開催日には有志自ら入場門で声をかけながらお客さんに配る、という活動はやがて、厩舎関係者、お客さん双方から認知されることになった。やがて、存続の署名活動をはじめた馬主会から声がかかり、「U駿」は署名はしても署名を集める活動自体は行わないポリシーであったが、馬主会主催の「宇都宮競馬を支援する会」の告知を載せて配布したり、宇都宮市内繁華街での署名活動の隣に宇都宮競馬を紹介する写真展やグッズの抽選などのイベントブースを出すなどの連携もできた。この時、馬主会側の署名活動に参加していた若手騎手が、U駿側のイベントブースに出張して臨時ファンサービスをしてくれたり、なんてことがきっかけで、騎手との距離も一気に近づいた。このイベントも、主催者とは全く切り離した馬主会とファン有志独自のイベントという位置付けながらも、実は密かな競馬事務所のバックアップがあったのだ。

いよいよ廃止の日を迎える1ヶ月前、競馬事務所から「U駿」で宇都宮競馬を一日プロデュースしてみないかという楽しそうなお話をいただいた。この日こそ、競馬に関わる全員がひとつになるチャンスだ。騎手のサイン会、装蹄実演、優勝馬との口取り・・・など、さまざまなイベントを成功させるため、騎手会、調教師会、馬主会、そして実演を申し出てくださった装蹄師さんに、競馬事務所から紹介をいただいて協力をお願いした。そのときはじめてお会いした騎手会長、調教師会長は「U駿」ということで快く承諾してくださり、「なんでもできることがあれば協力する」とおっしゃってくださったことが非常に嬉しかった。

無事、一日プロデュース「U駿うつのみや競馬ファン感謝祭」は成功に終わったが、この時ほど「ここからスタートなのに・・・」と悔しく思ったことはない。もしかしたら、廃止が目前に迫っていなかったらこういうチャンスはなかったのかもしれない。たった一回きりのイベントであったけど、競馬場全体の協力体制ができあがり、こんなイベントがあと何回もできれば、競馬場自体の雰囲気がもっと明るくなっていくかも・・・という手応えを感じたところが、終わりだったのだ。

金沢競馬は、廃止になった競馬場からの騎手や調教師の移籍が多いためか、幸いにも厩舎関係者内部に危機感があり、ファンを巻き込んで独自の動きを見せている。宇都宮から金沢へ移籍した調教師さんの縁で、私達が宇都宮で活動したノウハウを金沢に伝える機会があり、私たちも手伝うことができて嬉しかった。この調教師さんが、もしかしたら私達が目指していたことを受け取ってくれたのかなと思う。志半ばで終わった「U駿」の夢を、金沢の人たちがまた独自のスタイルで繋いでいくところを、楽しみに見守りたい。

[写真:廃止決定直前の宇都宮市内繁華街でのイベント。雨に祟られたが、競馬を知らなかった人達もたくさん観に来てくれた。馬が可愛いとか、騎手がかっこいいから今度応援に行くとか。それで良いのだ。ちょっと遅かったけど。]

 

宇都宮ホームシック

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無くなった競馬場は2度と復活しない。ネット中継が当たり前になったり(宇都宮はレース画像配信に関しては主催者は配信したかったろうにできなかった理由があったんだよ。)、競馬場同志の横のつながりができはじめたりと進化していく中で、あと1~2年宇都宮が頑張れれば・・・と後悔してもしきれない。宇都宮から他場へ移籍した騎手が目覚しい成績をあげている。その活躍が目覚しいだけに「私達の山竜」だった山竜が「北海道の山竜」になってしまったえもいわれぬ寂しさ(もちろん活躍は嬉しいよ)。内田(ピンク)騎手はフリー活動を始めてやっとメディアが頻繁に取り上げてくれるようになった。で、この2人と同じかそれ以上の腕を持つ騎手がまだ他に3人も居たんだよと思い返しても、もうその騎乗ぶりを見ることはない。宇都宮は本当に騎手の宝庫だったんだ・・・他場に誇れるものすごい財産だったんだ、宇都宮の名前を背負ってもっと中央に遠征して欲しかった・・・なんて思ったって遅い。そんな思いを北関東競馬の消滅で今なおイヤというほど味わっている。

宇都宮競馬が「廃止まで3年の猶予」と宣告されて初めてファン有志が立ち上がり、3年で少しでも上向きの変化を見せたい気持ちでやれることをやってみたけど、行政の都合か、廃止は1年前倒しになり、やっと手応えを感じはじめたところで志半ばで絶たれてしまった。「はじめるのが遅すぎた。あと5年くらい前から気が付いていたら・・・」と皆が後悔している。だから、廃止決定まであと数ヶ月・・・なんてところで何をやったって残念ながら遅すぎることも知っている。

ともかく、全国地方競馬場のファンや厩舎関係者、地元商店会の方々、他場の廃止は他人事じゃないんです。自分達の街の競馬場が本当に廃止に瀕したときに同じように生活の危機を感じ、署名活動をするだろうという想像がつくようなら、今から盛り上げる努力をして下さい。主催者が経営努力をしない!と非難する気持ちもわかりますが、競馬事務所はその立場上思うように動きにくい事情もあったりするんです。厩舎関係者やファンが立ち上がった方が早いんですよ。宇都宮でたった2年だけど、培ったノウハウや感じたこと、やり残したと感じることが参考になるならば、いくらでも提供します。

[写真は宇都宮競馬最後の日のとちぎ大賞典。宇都宮が誇る5人の2000勝ジョッキーズが掲示板を独占したが、うち3人はこの日がラストランとなってしまった。]

 

ばんえい競馬

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北海道に4場あるばんえい競馬、北見と旭川はすでに廃止を免れないようだが、岩見沢が近々決断を迫られ、残る帯広は一場開催はムリなので岩見沢の返答待ちという状態だそうだ。岩見沢の飲食店主が中心に行っている署名活動があるようなので、紹介しておく。私も、明日、東京競馬場へ行く予定なので2枚ほど署名用紙を打ち出して持っていく。できる協力はいくらでもする。

http://carol.chu.jp/banei/

こういう署名活動を見るたびに、「君ら動くの遅いよ・・・」と思ってしまう。正直、今までの他廃止競馬場の例を見るに、ここから挽回する可能性は非常に低い。署名は「参考」としか取り扱われず、法的に何の力があるものでも無い。今回、文面上からしか分かりえないことではあるが、岩見沢からばんえい競馬が無くなってしまうと、黙ってても毎年廻ってきた競馬関係者がお店に来なくなってしまうよ、という危機感もあってのことだと思う。

それなら、せめて、危ないとささやかれ始めた時期から、街をあげてばんえい競馬を盛り上げるといった活動をしなきゃならなかったはずだ。競馬関係者だけでなく、競馬を守るために競馬を観戦するお客さんが沢山来るように自分達が努力しなきゃいけなかったはずだ。「ばんえい競馬」がどれだけ大切な街の「観光資源」であったことか、気が付くのが遅いよ。なんで風前の灯火になってやっと・・・じゃないと動けないんだろうか。

私は宇都宮競馬場でたまに場外発売されることから「ばんえい競馬」を知った。競馬場へは今年の3月に一度帯広に行っただけであるが、南関場外やオッズパークでたまに買っている。今後も北海道へ旅行に行く計画を立てるとすれば、多分道営競馬かばんえい競馬のある場所へ行くことになる。

旭川は道営競馬が残るが、ばんえい競馬の無い北見や岩見沢、帯広へは行く理由が無い。

帯広のばんえい競馬を題材にした映画「雪に願うこと」を見た。良い映画だった。あんな素晴らしい宣材も用意されてるのに、もっと上手く利用しようよ。ここで帯広が粘らないと世界でたったひとつの「ばんえい競馬」が消えることになる。ばんえい競馬は他の競馬と違い、「世界唯一の競馬」「北海道遺産」として必ず残る道があると思っていた。というか、ばんえい競馬は他の競馬と異なり、それだけ宣伝の素材に恵まれているということだ。帯広の人たち、岩見沢と同じ危機感を感じたなら、今すぐにでも立ち上がって欲しい。とりあえず 続けていればいつか良くなるとか、競馬事務所の経営改善任せとか、そんなことを言っていたらもうダメなところまで来ているのだ。競馬関係者も、街の飲食店も、自分達の生活を守るために競馬が無くなっては困るのなら、自分達でなんとかしようと思わなきゃいつまで経っても変わらない。
前に廃止に追い込まれて行った人たちの多くは、「どうしてもっと早く動かなかったんだろう」と後悔していると思う。そういう思いがなかなか他場に伝わらず、また同じことが繰り返されている。

普通の競馬なら移籍の道もあるかもしれないが、ばんえい競馬が消滅したら、騎手や馬の移籍先は無い。